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ノーカントリー


拳銃であけた穴ではなく改造酸素ボンベで作られた完璧な穴。
初期作品「ブラッドシンプル/スリラー」の穴を再現?美しい光は漏れてきませんでしたが、その迫力ある丸い穴に魅入られるっていうか。
コーエン兄弟は光と影と円(丸・輪廻?・人生?)のマジシャン。わたしはこの映画を観ながら再度確信しちゃった次第(笑・おばかです。

テキサスの原野、たくさんの死体が転がる中で偶然にも大金を手に入れたモス(ジョシュ・ブローリン)。ベトナム戦争での体験からか、まだ生き残っていた瀕死の男が気になってしかたがなく水を届けることにするのだが、それが原因で彼は追われる身となる。でもこれまたベトナム戦争からの自信からか逃げおうせると踏むモス。ところが、彼の追っては想像を超えたモンスターだった。

コーエン兄弟独特のユーモアと皮肉、そしてぞくぞくするほどの恐怖に捕まえられて、最後まで引きずられてしまった。

まず、獰猛な犬に追いかけられ距離が縮まっていく恐怖や床に靴の後が残るほど首を絞められる苦しさの表現など、音楽も言葉も極力控えた中で実体験しているような感覚に襲われ、つい肩に力がはいりのけぞってしまう恐怖。
でも一番の恐怖感は、たとえばホームから転落した人を助けようとして電車に轢かれてしまうような運命のめぐり合わせみたいなもので、ふとした出来心とか良心みたいなものも180度狂ってしまうことが人生にはある、とおもってしまうこと。

モスは妻をおもい、良心の欠片は持ち合わせているものの金の前では非力で、欲と自身のルールにしたがって行動する一般人だ、たぶん。
でも、殺し屋シガーの存在は圧倒的に揺るぎのない死神のような存在。無表情にコインの表裏を問うモンスター、ハビエル・バルデム演じる殺し屋の不気味さは、変な髪形で可笑しさを醸し出しつつも、あっさりと他者の運命を決めてしまうのだ。まるでこの時代を具現化しているみたいに。
トミー・リー・ジョーンズ演じる老保安官はかつて良き時代の若者で「老いたるもの」の代表。彼はシガーの飲み残しの牛乳を飲んでみて彼を知ろうとする。フツー飲まないでしょう(笑。ところが、飲んでも彼の気持ちがさっぱりつかめない、浮かばないわけで、歯がゆくも深い溝、断絶、自分の力の不甲斐無さで困った顔になるばかり。CMでおなじみの宇宙人トミーにこんなところで会えるとは思ってもいませんでしたよ、まじで(笑。
は、冗談ですけど、
この三人の生き様は自分の決めたルールに従っているようでいて、ほんの些細なところで裏返ってしまう、かの殺し屋シガーさえもそうだと、人生の輪の皮肉が漂っているような気がしたのでした。
唯一登場する女性なんですが、モスの妻。彼女の最後の言葉が救いなのですが。

さて、暴力と血に染まったこの恐怖映画。
ラスト、唐突にほっとする夢の話が出てきます。月の形をした光の話。
わたしはエンドクレジットをぼーっと眺めながらその光がどんどん大きくなってくるのを感じたのです、不思議なことに。
映像にはまったく無いのにその光を感じるマジック。

ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン(監督、脚本)2007・米
コーマック・マッカーシー(原作)
トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ケリー・マクドナルド
JUGEMテーマ:映画


| いら | 映画ーな | 23:43 | comments(2) | - |
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名画座におりたのを観てきました。

私も、モスの妻の最期の台詞が、すごく良かった。彼女の透明感と共に救いを感じたし、映画全体で同じことを人物を替えて何度も繰り返し見せていく中で、彼女をラストに置いた意味も。

 私は、モスは金の為、というより、手応えのある「何か」に自分が巻き込まれたことに気付いた瞬間、そのことに吸い込まれていく自分を止められない・・・というようなものを感じたんです。
 それは多分、シガーがそうだったりするのと同じような。濃さが違うだけで。
 だから、ラスト、シガーが怪我をして子供に上着を売ってもらう時、化け物ではなく人間の顔をしてるところにぐっと来たし
 他の殺されてしまう人物たちの弱さに比してモスだけが「前のめり」にシガーを待ち受けてるシーン(発信機を見つけたとたん、それを使ってシガーと対決しようとする辺り)に、一面的でなくその「病」を描こうとしてるコーエン兄弟の手探りを感じました。

 で、帰ってきて、いら姉さんのここを読んだら、私にも、光が目に見えてきた気がしてしまった。
| ろーら@香聡庵 | 2008/09/16 11:38 PM |
ろーらさん、コメントありがとう。
見られたんですねぇー。わたしは半年前に観賞したんですけど、あのなんともいえない不安感、それは予測できないから不安なのだとおもうのですが、まだ自分の中によみがえってきて、どきどきしちゃいます。


>吸い込まれていく自分を止められない

うん。理屈じゃなくて抗えないもの。たぶんそういうものが大なり小なり誰にもありますものね。
わたしの場合、分析すればとても低次元の理由が多くて(笑。

>人間の顔をしてるところにぐっと来たし

わたしもです。モスと同じだなぁ、人間だったんだって、ぐっときましたね。
あの「海を飛ぶ夢」のハビエル・バルデムがおりてきたというか。


あまり細かいところまで憶えていないのですが、最後の夢の話が気になって、町山智浩さんのブログを読んで、なるほどとおもいました。

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20080320

深いですねぇ。

| いら | 2008/09/17 11:22 PM |









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