annex irabako

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光る腕輪
Kの腕には,体や魂を浄化しようとする石の腕輪がはめられていた。
水晶,それに名前も知らない不思議な石。

精神世界にのめりこんでいる彼女は,本人が言うように,はるかに美しくなったように見えた。肌に生気があって表情にはゆるぎない決意みたいなものもある。

「行ってみる?」と生ビールを一気に開けたKが言う。
「うん。そうだね。その時期かもしれない」と,答えながら,まだその世界に踏み込むことが怖い私だ。
それはなぜだろう。
もしかしたら,私の深い部分をさらけ出されてしまうのからだろうか。
それとも,知られたくない闇を認めなくてはならないからだろうか。
「どこから話したらいいのか,どこまで話したらいいのか,だよね」
「いいのよ。先生は一目でぜんぶ見えるんだから」
「…」
ぜんぶ見えるらしい。困った…ぜんぶか。
炭焼き「おっけい」の店内は
大小のグループが酔いにまかせて凄い騒音だ。
テーブルの上にはトマトやアスパラ,なめ茸を薄紙のような肉で巻いた串焼き,ネックや尻の焼き鳥,でーんと中央に置かれたサラダが,ところせましと並べてあって,空になった皿の山も出来ていた。
私は,小さなジョッキーをちびちび飲みながら,すでに心臓がどきどきしていた。崖っぷちに立っているって,こんな感じだろうかなどと醒めた他人が眺めている。

「ねぇ,その腕輪を買わされたわけ?」胡散臭い思いが頭の隅に,まるでへばりついたガムのようで,私は聞く。
「買わされたというよりも,先生に頼んだのよ。見て!石の配列だって,いろいろあるんだから。その人にあわせてくれるのよ」
「ふ〜ん」
続けて,奇跡のような話しがKの口から次々と飛び出してきた。

何かにすがりたい,たぶんそんなんじゃない。
行動を起こすことで,たぶん私は後悔もするし,たいせつな人からの責めも受けるだろう。行動を起こさなければ,私は鍵付きの箱に入れられた自分を見つけてしまうかもしれない。ただ,絡まってしまった自分の気持をどこから手をつけていいのかなのだ。

「どんな方法を使っても,すべてうまくいけばいいのよ。違う?」これが最終の結論よ,と言わんばかりにKは言う。
「まぁね…」と,まだKにも話してない拘りを隠すようにして,ビールを飲み干した。

のびやかな肌の上で主張している腕輪が,だんだん私の視界ぜんぶを占めていく。口から,ふいに言葉が出た。

「触らして」



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